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島田 和一

パーパス浸透のさらなる加速、投資実行期と位置づける中期経営計画を推進

MIRARTHホールディングス株式会社 / 代表取締役 兼 グループ CEO 兼 グループ COO 兼 社長執行役員

島田 和一

大きな節目を越え、次なる成長への礎を築いた前中期経営計画期間

 前中期経営計画(以下、前中計)は、変則的な4カ年の計画となりましたが、この間に当社グループにとって非常に重要な出来事が相次ぎました。
 最も大きな節目となったのが、2022 年9 月21 日の創業50 周年です。1972年に、小さな工務店としてスタートして以来、「誰もが無理なく安心して購入できる理想の住まい」を追求し、開発、企画、販売、管理の一貫体制によるスピード感、常識にとらわれない発想を強みに成長を重ねてきました。
 そして、この50周年と同じタイミングとなる2022年10月に「MIRARTH ホールディングス」への商号変更とホールディングス体制への移行を実施しました。
 ホールディングス化については、当社グループが次のステージに進むにはどうあるべきか、2年以上前から検討してきました。このグループ再編を50周年という節目に重ねることができ、新たな成長ステージに向けて「やるべくして実行した」と強く感じました。
 MIRARTHホールディングスグループの新体制発足に際して策定したパーパス(存在意義)が、「サステナブルな環境をデザインする力で、人と地球の未来を幸せにする。」です。
 不動産総合デベロッパーの枠を超え、地域社会と共創し、未来の街づくりに取り組む「未来環境デザイン企業」へ進化していくという決意が込められています。
 従業員によるパーパスの具現化を後押しするため、2023年10月には2030年に向けた長期ビジョン「地域社会のタカラであれ。」を策定しました。これらの取り組みにより、パーパスはグループ内へと浸透し始めています。発表当初の「宣言期」から、現在は従業員の「理解期」へとフェーズが移行しており、この流れをさらに加速させ、次の「浸透期」へとつなげてまいります。長期ビジョンについても、従業員がそれぞれの役割と日々の業務のなかで実現していこうという気運が高まっていると感じています。例えばマンション事業の全国展開を通じて、私たちは各地域の課題解決に貢献するマンションづくりを実践しています。具体的な成果としてお伝えできるまでにはもう少し時間がかかりますが、従業員が地域に深く根差し、熱意を持って取り組んでいる手応えを日々実感しております。この取り組みが実を結ぶ日を、ぜひ楽しみにお待ちいただければと存じます。

「地域社会のタカラであれ。」とは?東北6県での実践例

 当社グループは、2015年1月より、デザイン性を高めた「建築美」と、快適性・安全性を備えた「機能美」を追求した住まいを提供することにより、東北エリアの街づくりに取り組んできました。2021年4月には青森県に初進出し、東北6県全地域での分譲マンション展開となりました。
 大手総合デベロッパーの分譲マンション供給は多くの場合、仙台市が中心です。これに対して当社グループは、あくまでも地方の実需に応える開発を貫いていますので、数年間、マンション供給が途絶えている県内第3、第4の都市まで手掛けることもあります。
 なかでも、私たちが特に重視したのが、東北地域が抱える切実な課題の解決です。具体的には、高齢化と人口減少による中心市街地の空洞化や、冬季の屋根の雪下ろしによる負担です。これらの課題に対し、マンションの仕様における雪害対策を万全にするとともに、官・民・地権者が一体となって「まちなか居住」を促進することで、街に新たな賑わいを創出する開発に取り組んでいます。
 その結果、東北エリア新築分譲マンション供給戸数ランキングで、2015年からの10年間で9度、第1位を獲得しています。このように全6県において継続的に供給することは、当社グループならではの大きな強みであると自負しています。これはまさに、それぞれの地域においてしっかり住宅事業を通じて地域課題に向き合っている証だといえます。

新中期経営計画策定にあたっての課題認識とは

 当社グループは、創業以来長らく、不動産事業が売上高の大半を占めてきました。一言に不動産といっても、現在では、新築分譲マンション、オフィスやレジデンス、戸建といったハード面から、賃貸、仲介、管理・メンテナンスといったソフト面まで幅広い領域があります。不動産事業一本で成長を続ける道も確かな道の一つです。特に、当社グループは、創業以来、新築分譲マンション事業を成長の基軸としており、10年前には売上高の90%以上をこの事業が占めていたほどです。しかし、リーマンショックを経験してからは、この事業に偏るリスクを認識し、その他の不動産事業の拡大に積極的に取り組んできました。その結果、新築分譲マンション事業がグループ全体の売上高に占める割合は約50%となりました。この期間、新築分譲マンション事業の売上は、倍近く伸びていますが、その他の不動産事業が大きく拡大したことで比率が下がりました。このように不動産事業全体の取り組みが一定の成果を上げていることを踏まえ、新中期経営計画(以下、新中計)においても、不動産セグメントをいかに成長させるかが、計画の一つの肝となっています。
 一方、エネルギー事業は、当初、新築分譲マンションの屋上に太陽光パネルを設置するといった付加価値を高める位置づけでしたが、2013年から事業として本格的にスタートを切りました。2016年に国内第一号の上場インフラファンドとなる、タカラレーベン・インフラ投資法人を上場させました。その後、継続的な物件取得を進めることで、資産規模を600億円台まで拡大することができました。とはいえ、これは、太陽光発電所を単なる金融商品として開発し、ファンドに売却する「エネルギー施設の流動化ビジネス」でしかありません。これを名実ともにエネルギー事業とするため、同投資法人を株式公開買付け(以下、TOB)により事実上の自社保有とし、発電した 電力の売電収入を軸とするストック事業への転換を行いました。この2022年のTOBを経て、エネルギー事業の将来をどのように描き、成長させていくかが、新中計のもう一つの肝となります。
 エネルギー事業を次期中期経営計画、さらにより長期にどのように伸ばしていくのかーTOB以前を「変革期」とするなら、新中計期間は「投資実行期」と位置づけています。

島田 和一

新中計の「投資実行期」における注力ポイント

 新築分譲マンション事業では、前期の売上戸数が2,339戸であるのに対し、2026年3月期は2,820戸を予想しています。今後、新築分譲マンションの売上戸数は安定的かつ継続的な供給を目標に、2,200戸前後となる計画です。当期の戸数も、JV(ジョイントベンチャー、共同企業体)を除くと、2,150戸となります。
 このような見通しの背景にあるのが、建設コストの高騰、そして工期の長期化です。時間外労働の上限規制と深刻な人手不足を背景に工期が伸びた結果、資金回収サイクルも伸びています。
 こうしたコスト上昇圧力に対しては、土地の仕入を顧客ニーズの高い、高付加価値化が見込める立地に厳選する取り組みを一層強化するとともに、建設会社と密に連携したコストコントロールの徹底により、想定粗利率の確保を目指しています。
 一方、工期の長期化に伴うバランスシートの肥大化リスクを低減するため、質の高い用地を厳選し、強みである商品企画力と販売力を掛け合わせ、開発事業をパートナー企業と共同で推進しています。これにより、先行利益を確保しつつ、経営の健全性を維持しています。パートナー企業にとっては、開発事業に伴う許認可や工期の長期化リスクの低減につながるメリットがあり、当社グループの実績に一定の信頼をいただいている証と自負しています。
 今後も、需要が堅調な上に建築コスト高による工期長期化の影響で、新築分譲マンションの販売価格は当面下がらないものと見ています。マーケットをしっかりと見極めた上で好立地を厳選して取得することで、当社グループは安定した事業展開が可能であると見込んでおります。同様に、収益不動産の流動化においても、従来は7割が開発型でしたが、現在は既存型にシフトしています。既存物件を取得し、リノベーションしてバリューアップし、売却するスタイルです。新中計の3年間は、この流動化に大きく投資をし、不動産セグメントの成長ドライバーとしていきます。
 エネルギー事業では、企業の脱炭素化に向けた再生可能エネルギー需要は今後も非常に旺盛な状況です。当社グループは、1MW未満の比較的コンパクトな太陽光発電所を開発し、オフテイカーに売電しています。太陽光パネルの設置に適した土地情報は、不動産会社として培ってきた豊富なネットワークを駆使し常に取得しております。さらに、太陽光発電の価値を最大化する上で不可欠となるのが蓄電所ビジネスです。電力の需給バランスをとる上で、太陽光発電の不安定さを補い、日常の余剰電力を蓄電し、不足時に蓄電した電力を併用する取り組みが重要となるからです。
 また、海外での事業も展開しています。カンボジアにおいて、カシューナッツの殻を原料としたバイオマス燃料化事業に着手しました。カシューナッツを加工し、残った殻をオイルにするとともに、残渣をバイオマス発電の燃料とするものです。この事業は、カシューナッツという特産品をカンボジア自国の産業や雇用の創出、電力自給に生かすという、多面的な貢献につながる大きな可能性のある事業です。
 以上のような成長戦略を着実に実行する一方で、株主還元も経営における最重要課題の一つと位置づけています。成長に軸足を置いたキャッシュの使い方を実行しつつ、安定的な配当による還元を行っていくことを基本方針としています。新中計では、配当性向35 ~40%へと引き上げ、安定的かつ継続的な配当を実施します。また、2期目以降は初年度の1株当たり配当金21円を下回らない水準を維持する方針です。

島田 和一

ステークホルダーの皆さまへ

 MIRARTHホールディングスグループは、一貫体制によるスピード感と、常識にとらわれない発想を強みに成長を重ねてきました。
 今後、「未来環境デザイン企業」としてさらなる発展を遂げる原動力となるのは、パーパスの実現だと考えています。当社グループが、どのように社会と向き合おうとしているのかーこの存在意義をしっかりとお伝えし、社会に発信していくことが大事だと考えています。パーパスをしっかりと軸に据え、どのように未来につなげていくか。不動産とエネルギーを通じ、人々と地球の未来の幸せをサステナブルな視点で徹底的に考え、実行に移していきたいと考えています。それには、各事業が専門性を追求し、未来の安定的な収益を支える柱へと進化していくこと、従業員一人ひとりが多様な考え方を持ち、常に新しい事業を生み出すことが必要です。これからも、「人と地球の未来を幸せにする」というパーパスのもと、真摯に企業価値向上に努めてまいりますので、引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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